僕らの心地よさを満たす、AIR SHELF<br>(プロダクトデザイナー・岩松直明)

僕らの心地よさを満たす、AIR SHELF
(プロダクトデザイナー・岩松直明)

創作を支える、のびやかな本棚
(作家/文筆家・安達茉莉子)
Reading 僕らの心地よさを満たす、AIR SHELF
(プロダクトデザイナー・岩松直明)
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心地よい棚、心地よい暮らし。一人ひとりの個性が表れる棚を起点に、正解のない楽しみ方を一緒に考える「私の棚」。第8回はAIR SHELFを生み出した、プロダクトデザイナーの岩松直明さんにお話を伺いました。

岩松直明
プロダクトデザイナー。2020年よりTakramに参加。海外での作品発表や中小企業の自社製品開発などの支援も行う。3LDK、62㎡。
instagram:@naoiwamatsu

 

AIR SHELFが生まれた、暮らしの実感

「自分の暮らしと向き合った経験が、AIR SHELFにつながっています」

そう語るのは、プロダクトデザイナーの岩松直明さん。デザイン・イノベーション・ファーム「Takram」に所属しながら、個人でも海外出展を重ねる彼はAIR SHELFを生み出したデザイナーでもあります。

自宅は、美術館と緑豊かな公園が見渡せるマンションの一室。2019年にリノベーションを行い、建具や家具の細部にまで美意識が行き届く空間となっています。

「リノベーションにしたのは、主体的に選びたかったから。間取りや素材がある程度決まっている新築物件が、暮らしにフィットするイメージがどうしても湧かなくて」

3LDKだった間取りを、壁を壊してワンルームに。自宅で仕事をする時間も多いため「働く」と「暮らす」が混ざり合う、心地よい緊張感のある家がテーマ。普通に縛られず、自分たちの心地よさを選んでいきました。

「たとえばリノベーションだと無垢材の床が多いですが、グレーのタイルを選んだことで、仕事場としても違和感がなく気に入っています」

印象的なのは部屋を左右に分ける斜めの壁。左はパブリックスペース、右はプライベートスペースとゆるやかにゾーニング。ドアで一つ一つ区切らないことで、ゆるやかな気配を感じられるようにしたのもこだわりです。

(洗面や風呂場を区切る可動式の間仕切り)

「ドアって本当に必要かな?って思うんです。わざわざ取っ手をつけて“ドア然”としなくても、壁や板で“区切る”という機能は満たせる。心地よさと機能を叶える形は何か、ゼロベースで選んでいきました」

 

ものと役割の関係性、美しさへのまなざし

AIR SHELFの開発に携わりはじめたのは、リノベーションの1年後。自らの暮らしと向き合った経験が自然に生かされていたと振り返ります。

「土間に木の棚があるのですが、本棚にも靴箱にも使えるから6年経った今も使いやすい。心地よさってそういうことだと思うんです」

一般的にメーカーはものに「役割」を付与して販売します。たとえばスリッパ立ては、スリッパを立てるものとして。分かりやすい一方、使い方が限定されることで、変化が訪れた時、不要になるもどかしさも感じていました。

「役割に縛られないものを作ることで、一人ひとりの心地よさに寄り添えたら…とずっと思っていました。人の暮らしはどんどん変化していくから、既製品に合わせると窮屈になってしまう」

(土間にある木の棚)

「そんな思いを抱いていた時に、平安伸銅工業さんから『暮らすがえというミッションを体現するブランドを作りたい』とお話をいただいて。そこから暮らしの変化に寄り添うAIR SHELFにつながっていきました」

またAIR SHELFは美しい佇まいも魅力。何を置いても置いていなくとも、空間になじみます。中でもShelfの13.5mmの棚厚は最後までやりとりを重ねたそう。

「食器棚を作った時、棚板が薄いと心地よい緊張感につながると気づきました。強度を理由に厚くすることはできましたが、野暮ったくなる。バランスや質感は緻密にデザインしましたね」

(インスピレーションの源となった食器棚)

そこには「美しさは感覚によって導き出される」という思いがあります。

「家具を選ぶ決め手って、最終的には感覚だと思います。”なんかいい”とか”なんかちがう”。“なんか”をどこで感じるかというと、細部に宿る印象の積み重ね。ディテールまで気を配りながら、仕上げていきました」

 

生みの親の使いこなしは、案外シンプル

岩松さんのAIR SHELFは、土間にあるデスク横に佇んでいました。 Bedside Shelf SetBookendHookをカスタマイズ。 仕事中、机の上で散乱してしまう筆記用具をすっきり収めたことで、集中できるように。

「サブデスクとして活用しています。オープン棚だから、椅子を回転させるとAIR SHELFの左側も正面として使える。Shelfの横フタを外して定規を入れたり、Bookendはマグネット対応のため領収書を貼ったり。地味ですが利便性抜群です」

(裏技的使いこなし ※ユーザー使用例です。Shelfは付属のキャップと合わせてお使いください。)

土間とAIR SHELFを置いた場所の床の高さは異なりますが、椅子に座った時に手が届く位置に調整できるのも魅力です。

「実際使ってみて心地いいのは、横からもアクセスできる点と、Shelfの高さを自由に調整できる点。お気に入りのものを置いた時、全方位から眺められるのもすごくいい」

「シンプルな使い方ですみません(笑)」という一言に、AIR SHELFだから叶う心地よさを感じます。飾っても良いしミニマルも良し、正解は使う人に委ねられています。

「SHELFと言っていますが、役割は自由。PillarにHookをたくさんつけたらコートラックにもなります。皆さんの心地よさを自由に叶えてもらえたらうれしい」

AIR SHELFが心地よい理由は、きっと主体が私にあるから。そして私たちがのびやかに使えるようにと願いながら作られた家具だから。

心地よさを選んで暮らすすべての人に、これからもAIR SHELFは寄り添ってくれるでしょう。

 

「私の棚」は今回で最終回。
一人ひとりの心地よい暮らしやAIR SHELFの使いこなしが
これからも皆さんのヒントになりますように。

(写真と文:七緒)