創作を支える、のびやかな本棚<br>(作家/文筆家・安達茉莉子)

創作を支える、のびやかな本棚
(作家/文筆家・安達茉莉子)

住まいが変わっても、
心と暮らしに寄り添う棚
(ヨガ講師・若松由貴子)
Reading 創作を支える、のびやかな本棚
(作家/文筆家・安達茉莉子)
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心地よい棚、心地よい暮らし。一人ひとりの個性が表れる棚を起点に、正解のない楽しみ方を一緒に考える「私の棚」。第7回は鎌倉に住まいを移し、表現の幅を広げる作家・文筆家の安達茉莉子さんに話を伺いました。

安達茉莉子
言葉と絵による表現を幅広く行っている。著書に『毛布 – あなたをくるんでくれるもの』『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』など。2LDK、61㎡。
instagram:@andmariobooks

 

住まいを変えて、本来の表現に舵を切った

作家・文筆家として創作の翼を羽ばたかせる一方、等身大の幸せをまなざしながら、暮らしや生き方を見つめ直し続ける安達茉莉子さん。

“「これでいいや」で選ばないこと。「実は好きじゃない」を放置しないこと”(著書『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』(三輪舎)より)

など、実感から生まれる言葉に勇気をもらう読者も多く、私もその一人です。

1年前、安達さんは住み慣れた横浜・妙蓮寺を離れ、鎌倉へ住まいを移しました。きっかけは身体的な感覚と創作へのピュアな欲求。

「海に近い町で暮らしたくなったんです。実家が大分の山奥にあり、体そのものが自然を欲する感覚も強くて。内見の日、最寄りのバス停を降りた瞬間『あ、好き』と惹かれました。小道を進むと、緑の匂いがどんどん濃くなって…ここに住めたら幸せだなって」

鳥のさえずりが響き、庭から木漏れ日が降り注ぐ。行きつけの八百屋に通い、自らの手でごはんをこしらえる。夕暮れ時は茜色に染まる空を眺めたり、海辺に自転車を走らせたり。鎌倉の心地よさは想像以上だったそう。

「朝起きて窓から山が見える。それだけでいい一日が始まる予感がします。出張から帰って、駅に降り立つとほっとするほど。文化もありながら、土着的な暮らしもできる。日々満たされています」

引っ越しの一番の理由は「”人里離れた場所”で創作と向き合いたかったから」。

鉢の植え替えでぐんと伸びた観葉植物にヒントを得て、7畳のアパートから2LDKのテラスハウスへ。住まいを広げたことで、表現も変化しました。

「以前はエッセイなどノンフィクションのものがメインでしたが、少しもどかしさも感じていました。書きたい世界はもっと大きいから、ジャンルを限定してしまっていることが窮屈だったんです。今はじめてフィクションに挑戦しています。物語を自由に書けることが心から幸せ」

 

鮮度を意識しながら、巡らせる3つの本棚

リビングから階段を登り、2階の扉を開けると──。そこはまさに求めていた「自然」と「創作」がつながりあう場所。

窓の向こうに緑が揺れ、季節の息吹が感じられる小部屋が安達さんの書斎です。

本をつくる安達さんにとって、家具の中でも本棚はエッセンシャルな存在。心地よい生活を探る道のりを綴ったエッセイ『私の生活改善運動THIS IS MY LIFE』でもはじめに着手(しかもDIY!)したのが本棚を作ることでした。

「今、本棚は3つあります。今回あらたに加わったAIR SHELF、妙蓮寺時代にDIYでこしらえたもの、クローゼットにあるアーカイブ用」

3つの本棚はそれぞれ使い分けています。旬の本はAIR SHELF、それ以外はDIY棚やアーカイブに。心の機微に正直になって、ぐるぐる巡る本棚のあり方。

「目に入るところに鮮度のいい本を置くのがおすすめと聞いたことがあって、インスピレーションをもらえる本はAIR SHELFに。頻繁には読まないけれど残しておきたい本はクローゼットの本棚へ」

(DIYでつくった本棚、鏡に映るのがAIR SHELF)

そしてインスピレーションとアーカイブの中間にあるような、興味・関心のコアにある本はDIY本棚へ。植物、料理、中国茶、能、旅など興味のままにつれづれと。

「たとえば食のエッセイを書きはじめたら、ここにある料理本をAIR SHELFに移動すると思います。本の鮮度を意識して、新陳代謝していくのが心地よい本棚」

ではAIR SHELFの本棚は具体的にどう使っているのでしょう?

 

壁一面の本棚が叶った、AIR SHELF

「賃貸だから難しいと諦めていたけど、憧れだった壁一面の本棚がBook Shelf Setを2つ並べることで叶いました」

安達さんのAIR SHELFはデスクに寄り添うように佇んでいました。今までの著作、漫画やエッセイ、美しい装丁の絵本。さながら独立系書店のようで心が躍ります。

「AIR SHELFは創作を後押ししてくれる存在。今は物語を書いているため、アイデアやインスピレーションが湧き出る本を置いています。執筆の合間にページをめくり、また書く世界に没入していく。表紙を飾ることで、ふとした瞬間に目が合うのもうれしい」

(オープン棚だからすぐ手に取ることができる)

一般的な本棚は、高さや奥行きが決まっているため、大きな判型の本が入らなかったり、奥行きのずれを我慢したりと小さな煩わしさがつきもの。

でもAIR SHELFは棚の高さもサイズもフレキシブル。

一番下はShelf Mでラインを揃えて端正な印象に。その上で心赴くままに作り上げた棚は、木々が枝葉を茂らせるように自然で美しい。整っているのに遊び心もあり、そのバランスが絶妙です。

「最初は公式サイトのようにすべての棚の高さをぴしっと揃えようとしましたが、なかなかうまくできなくて。あえてずらしてもかわいい!と気づいたんです。自由にShelfを動かせるから私のような飽きっぽい人にもぴったり。幸せな本棚になりました」

(左:Shelf Sにお香と時計を / 右:Bookendですっきり収納)

「今ようやく、自分がやりたかった表現の本丸に挑んでいる」と清々しい表情で話す安達さん。その目に迷いはありません。のびやかに広がる創作を支える本棚。AIR SHELFのあたらしい可能性にふれた時間でした。

(写真と文:七緒)