「防災意識ゼロ」だった僕が家具固定を始めるまで

「防災意識ゼロ」だった僕が家具固定を始めるまで

ここでは、暮らしにまつわる悩みを解決したり、暮らしの変化を楽しんだりする、「誰か」のお話をお届けしています。

「こんな暮らし、いいかも。」とあなたの暮らしを変えるヒントになれば幸いです。

ライター 売れないシンガーソングライター
平安伸銅工業のスタッフ。妻1人、子2人、母1人と暮らす、アラフォーおじさん。細かいところにツッコミを入れるのが得意。ミニマル志向が強く、平安商品を駆使して快適な空間づくりに奮闘中。

自分を守ることが、誰かを助けることに繋がる。

結婚するまで、私の防災意識はゼロでした。家の中には備蓄の食材すらない。
ところが妻は、一人暮らしの頃から防災リュックを用意し、備蓄品の賞味期限が近づくと家族で試食会を開き「次はあれを買ってみようか」なんて相談してくるような人。
彼女の影響で、防災に対する感度は多少高くなったと思います。

ただ、家の中の環境については、自分の会社で耐震ポールを取り扱っているけれど、倒れてくるものって正直キッチンの食器棚くらいだし、わざわざ固定するほどでもなあ…と特に手をつけていませんでした。

今思うと、色々やってはいたものの、これまで大きな災害に遭ったことがなかったので「自分ごと」になっていなかったのかなと思います。

そんな折、仕事で能登の仮設住宅を訪ねる機会がありました。

仮設住宅に住まわれている方の暮らしのお悩みを伺いにいくことが目的でしたが、まず、現地の様子に言葉を失いました。

崩れた家、寸断された道…今でもその時の感情を上手く言葉で表現ができません。

自然災害って、こんなことが起こりうるのか。

これまでテレビやスマホで震災のことは見聞きしていたけれど、「それが実際に起こるとこうなる」ということが理解しきれていなかったことを痛感しました。

帰宅して妻と話し合い、備蓄品以外に家の中の環境も見直すことになりました。

「わざわざ固定するほどでも」と思っていた食器棚も、これがもし台所に立っている時に大きく揺れたら、倒れたら、避難経路を塞ぎ、家族を危険にさらすかもしれない。

耐震ポールで固定して、マットを入れる。思ったより設置も簡単で見た目もすっきりしていて一安心。

取り付けてみると、不思議なことに「家具固定したから一安心」ではなく、「じゃあ次は何をしよう?」と意識が変わっていきました。

寝室にはすぐに持って逃げられるように小さな防災バッグを家族分用意。
ダイニングの真上にかけていた壁掛け時計は「食事中にこれ落ちてきたら危ないよね?」の妻の言葉で紙製の軽いものに交換しました。オシャレでお気に入りです。

自分を守ることが、誰かを守ることにつながる。

防災意識ゼロだった私が、ここまでやるようになったのは、自分ごと化して想像力が働くようになったこともありますが、とある防災イベントで、ある言葉に強く共感したこともあります。

「自助が共助につながる。」

自分たちがケガをしなければ、医療や救助のリソースを、本当に必要な人に回せる。
自分を守ることが、自分や一緒に住む家族だけでなく、誰かを助けることにつながる。
ああ、それならばできることは誰かのためにやろう。

防災って、つい後回しになりますよね。忙しいし、めんどくさいし、「自分はまあ、大丈夫だろう」と思いたくなる。

大災害があった時に「なんか用意しなきゃ!」と意識が高まるけれど、時がたてば忘れてしまう。

でも、壮大なものじゃなくても「この時計落ちて頭に当たると家族が危ないかも」なんて日常の暮らしから少しずつ想像して変えていくことも、できるのかなと思います。

この体験談が、誰かのきっかけになれば幸いです。