ここでは、暮らしにまつわる悩みを解決したり、暮らしの変化を楽しんだりする、「誰か」のお話をお届けしています。
紹介されているアイテムは、当店で取り扱っていない場合もありますが、「こんな暮らし、いいかも。」とあなたの暮らしを変えるヒントになれば幸いです。
ライター&バイヤー ハブチン
30代男性。平安伸銅工業の中の人。整理収納用品を作っている会社で働いているのに、めんどくさいことや片付けは苦手。ADHDの傾向があって、ウォーリーみたいに忘れ物が多い。
親孝行って、ちょっと照れくさい。
「たまには帰ってこいよ」
そんなLINEが届いても、なんだかんだ理由をつけて後回しにしてしまう。
実家に帰れば、ご飯が用意されていて、外でお金を出そうとしても「いらん、いらん」と押し戻される。
結局、親と子の関係って、いつまで経っても同じままだ。
でもふと、顔のシワや、動きの鈍さに気づいたとき——
「あ、もっと会わないとな。」って思う。
きっと親が病気になったり、もう会えなくなってからじゃ遅い。
久々の実家。静かすぎる二階の部屋。
大阪の実家にひさびさに帰ってみると、子ども達が育った部屋は今や物置になっている。
4人兄弟が住んでいた広い家に、両親ふたり。
生活はほぼ1階で完結していた。
ふと寝室をのぞくと、ベッドの横に大きなタンスがドンとある。
「これ…地震が来たら危ないやん。」
もし倒れたら、大けがしてしまうかもしれない。
家具転倒防止の突っ張り棒を取り付ける。
自分の会社の商品——家具転倒防止の突っ張り棒を、さりげなく持っていった。
歳のいった親がやるにはちょっと難しい高所作業。
「取り付けもやるわ。」と脚立にのぼって作業する僕と、見守る母親。
少しずつ会話が増えていく。
「このタンス、おばあちゃんが結婚のときに買ってくれたやつやねん。」
「ほんまは、私の好みじゃない。でもおばあちゃんが一番いいやつ買ってくれて捨てられへんねん。」
昔からタンスはあったけど、そういうストーリーがあったのは初めて知った。
そう話す母の横顔を見て、
“ああ、こういうのが、愛情なんやな”って思った。
母の気持ちがこもったタンス、それを捨てられない娘。
母の安全を守るために、そのタンスに家具固定用の突っ張り棒を取り付ける僕。
親から子、子から親。誰も言葉にしないけれど、そこには家族に対する愛情がある。
行動で伝える、さりげないありがとう。
言葉にするのはちょっと照れくさいけど、
こうして何かを取りつけたり、話を聞いたりする時間のなかで、
感謝の気持ちをそっと置いてこれた気がした。
一緒に取り付けながら、昔話を思い出したり話たりするのもおもしろい
大人になって自分も親になってから、改めて親の感謝に気づくことがある。
「いつまでも元気でいてな。」
心のなかで、そうつぶやいた。
親もなんだか嬉しそうだった。
やっぱり、親孝行って、そんなに大げさじゃなくていいのかもしれない。
感謝の気持ちを耐震ポールに載せて平安伸銅の防災用品