この記事を書いた人 loreee
平安伸銅工業のスタッフ。家族3人暮らし。日々の生活と向き合い、部屋にちょっとした変化を取り入れては気分を一新するのが好き。無類の「革」好きでもあり、使い込むほどに自分らしく育っていくモノへの愛情を惜しまない。
「カーテンタッセル」
このプロダクトを担当するまで、正直その言葉にはあまり興味が持てませんでした。
カーテンを買ったら付いてくる、あの紐のこと。 ペラペラで、ただそこにあるだけの「付属品」。
そんなものに、私の大好きな「革」を使うなんて、正直もったいないと思っていました。
でも、今回「カーテンタッセル」を作ろうと思ったときに「革」という素材と真剣に向き合ってみました。そこで気づいたのは、「まず『革の魅力』が伝わること。タッセルという役目は、その次でいい」ということ。
私が作りたかったのは、上品なインテリア雑貨ではありません。
ただひたすらに、「革という素材」の魅力です。

私は、いわゆる「革好き」、いや、「革激愛者」です。
完成されたバッグのデザインよりも、むしろ「素材そのもの」にグッとくる。デザインはその次、というタイプ。
革の厚み。 繊維がギュッと詰まった断面。 指で押した時の、モチッとした反発力。
そういう、革本来の「たくましさ」みたいなものを、常に感じていたい。 でも、鞄や靴はクローゼットにしまうもの。家の中で、革を愛でる時間がないのが寂しい。
もっと家の中で、無防備な革の表情を置きたい!見たい!そんな個人的な「革への偏愛」から、余計な装飾を削ぎ落とした、この肉厚な帯が生まれました。
デザイン? していません。ただ、最高級の革を切り出し、重ねた。 あえてコバ(断面)も磨きすぎず、塗料で塗り固めることもしない。「すっぴん」のままです。機能は「マグネット式」一択でした。 紐や金具が見えると、革以外のノイズが入るから。 パチンと挟んで、革の塊だけがそこに浮いている状態にしたかった。
試作中、ふと気づきました。 「これ、マグネットということは、冷蔵庫にも付く」
何気なく、キッチンにあったコーヒーフィルターを、この革で冷蔵庫に留めてみました。

……あ、これ、すごくいい。
無機質な冷蔵庫に、温かみのある「本革」があるだけで、なんだか急にそこがギャラリーみたいに見えてくる。
「冷蔵庫の質が、急に上がった気がする」
大げさじゃなく、本当にそう思いました。 スチールラックの冷たいポールに巻きつけてもいいし、本来の用途通り、カーテンを束ねてもいい。

実際に使ってみてわかったのですが、カーテンタッセルというのは、毎日必ず「握る」ものです。
朝、光を入れるためにカーテンを開けて、革を握り込む。 夜、閉めるときにマグネットを外す際、親指でグッと革を押す。
そのたびに、指先の油分がゆっくりと馴染んでいく。 毎日触れるからこそ、革は呼吸をし、色は濃くなり、深い艶を帯びてくる。
これは「使う」というよりも、「育てる」感覚に近い。
ふと視界に入ると、思わず見てしまう。 無機質な家電や家具の中に、そこだけ濃厚な「革の景色」がある。 そこは今、私にとって家の中の最高の「定点観察スポット」になっています。
「タッセルなんてどうでもいい」と思っていた自分が、 今では「革を触りたい」と思っている。人生、何がハマるかわからないものです。




